経皮的経管的脳血栓回収機器適正使用指針第2版に関するお知らせ 2015.4.1  



 
日本脳神経血管内治療学会会員各位
                                                   NPO法人日本脳神経血管内治療学会


日本脳神経血管内治療学会は、日本脳卒中学会の要請に従って、同学会と日本脳神経外科学会と共同で、経皮的経管的脳血栓回収機器を用いた再開通療法に関する実施基準、適正使用指針を定めてきました。2015年の2月に公表された新しい研究成果に基づいて、適正使用指針が改定されましたので、ここに公表します。


第2版発表によせて(転載)
 2014年4月に日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会の三学会が定めた本指針を公表した。その後ほどなくして、同年10月にMR CLEAN、2015年2月にESCAPE、EXTEND-IA、SWIFT PRIMEの計4件のランダム化比較試験の成績が相次いで発表された。これら4つの試験では、前方循環系の主幹動脈(内頚動脈、中大脳動脈近位部)閉塞による急性期脳梗塞に対して、rt-PA静注療法を含む内科治療に加えて主にステントリトリーバーを用いた血管内治療を追加することにより、内科治療単独の場合よりも90日後の日常生活自立度を有意に改善させた。これらの研究結果は、急性期脳梗塞に対する経皮経管的脳血栓回収用機器を用いた血管内治療について、一定の有効性、安全性を示すものであり、そのインパクトは非常に大きいと言わざるを得ない。
 これらの成績発表を受け、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会の本療法に関連する3学会は、可及的速やかに「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針」を改定し、第2版として発表することとした。本療法の実施者は、本指針の内容を十分に理解した上で、適切な症例選択と手技によって本療法を行っていただきたい。


資料
 三学会承認実施基準  三学会承認適正使用指針
 



 
関連3学会(日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会)承認
経皮的経管的脳血栓回収用機器実施基準(2010年2月策定)
適応 急性脳血管閉塞
個別の機器の適応は、薬事承認上の適応とする
実施施設基準 設備機器 手術室または血管撮影室に適切な血管撮影装置が常設されていること
治療環境

t-PA静注療法が実施可能な環境を有すること(*)

実施医基準 基礎資格

術者として頭蓋内血管へのカテーテル誘導を5件以上経験していること

研修義務

対象医療機器の研修プログラムを修了していること

 *t-PA静注療法が実施可能な環境とは、以下の4項目をすべて満たしていることを言う
  1. CTあるいはMRIが24時間可能である
  2  急性期脳卒中に対する十分な知識と経験を持つ医師(日本脳卒中学会専門医など)を中心とするストロークチーム及び設備(SCUあるいはそれに準ずる病棟)を有する.
  3. 脳外科的処置が迅速に行える
  4. 実施担当者が日本脳卒中学会の承認する本薬使用のための講習会を受講し,その証明を取得する

関連3学会(日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会)承認
経皮的経管的脳血栓回収用機器適正使用指針(2015年4月策定、抜粋)
機器 1. 治療に際しては、薬事承認を得た機器を用いること。
本指針策定時に薬事承認されている機器は、Merciリトリーバー、Penumbraシステム、Solitaire FRおよびTrevo ProVueで、他にREVIVE SEの治験が実施され承認申請中である。
適応と実施条件 2. 治療適応は、個別の医療機器の薬事承認条件に基づくこと。
Merciリトリーバー、Penumbraシステム、Solitaire FR、Trevo ProVueは、原則として発症8時間以内の急性期脳梗塞において、組織型プラスミノーゲン・アクティベータ(rt-PA)の経静脈投与が適応外、又はrt-PAの経静脈投与により血流再開が得られなかった患者を対象として承認され、機器は内頚動脈・中大脳動脈・椎骨動脈・脳底動脈の再開通を図る目的で使用されている。
新しく承認される機器に関しては、個別の医療機器の承認条件および仕様に基づくこと。
3. 実施医療機関は、本療法を常時実施可能な脳血管撮影装置を備え、rt-PA静注療法が実施可能な環境を有すること。
脳血栓回収療法を行うことが出来る環境、すなわち血管造影室または手術室に血管撮影装置を備えていることが必須である。また、rt-PA静注療法が実施可能な環境とは、1) CTあるいはMRIが24時間可能である、2) 急性期脳卒中に対する十分な知識と経験を持つ医師(日本脳卒中学会専門医など)を中心とするストロークチーム及び設備(Stroke Care Unit: SCU、あるいはそれに準ずる病棟)を有する、3) 脳外科的処置が迅速に行える、4) rt-PA静注療法実施担当者が日本脳卒中学会の承認する本薬使用のための講習会を受講しその証明を取得する、の4条件を満たしていることである。
4. 実施医は、脳血管内治療専門医、またはそれに準じる経験を有する医師が行うこと。
本療法を安全に行うため、日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医、または同専門医試験受験資格に相当する経験、すなわち100例の脳血管内治療(うち術者20例、血行再建術15例)の経験を有する医師が行う必要がある。
留意点 5. rt-PA静注療法の適応例に対してはそれを優先すること。
科学的根拠の蓄積に基づき、発症4.5時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害患者のうち、禁忌項目を有しない適応患者に対してrt-PA静注療法を行うことが強く推奨されている。日本脳卒中学会の策定したrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針第2版に基づき、適応患者を慎重に選択してrt-PA静注療法を実施すべきであり、その適応患者に対しrt-PA静注療法を行なわずに本療法を実施することは厳に慎まねばならない。
6. 本療法が有効であるとの科学的根拠が示されたが、有効性を示した条件や環境を確認した上で本療法を実施すること。
最新の知見では、rt-PA静注療法や内科治療に本療法を追加することにより患者の転帰を改善するという科学的根拠が示された。それぞれの知見は、画像検査によって前方循環の近位主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞と診断された症例を対象とし、主にステントリトリーバーを用いた血管内治療を早期に行うことによって達成されたものである。これら有効性を示した科学的根拠が得られた条件や環境を参考にした上で、本療法を選択し実施することが必要である。
7. 本療法に伴い閉塞血管の再開通が早く認められるほど、良好な転帰が期待できる。このため本療法の施行を決めた場合は、少しでも早く治療を始めることが望ましい。
8. 我が国における経皮経管的脳血栓回収療法の現状を踏まえて、本療法を実施すること。
Merciリトリーバー、Penumbraシステムの我が国における市販後調査の結果の一部が公表されている。本療法を実施する際、これらの結果を踏まえて実施する必要がある。
9. 実施医療機関および実施者は、本療法の調査や研究に積極的に協力し、その効果や問題点を明らかにすることに協力すること。
Merciリトリーバー、Penumbraシステム同様、新しい機器の承認後に行われる市販後調査やその他の臨床研究により、脳動脈再開通療法の実態を調査し、その安全性や有効性を明らかにする必要がある。急性脳動脈閉塞の治療の中での本療法の位置づけを含め、これらの調査、研究に協力することが求められる。